西尾泰和
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高次元ベクトルの可視化
私は大学院で高次元ベクトルの可視化を研究していました。
何千次元もあるデータを、人間が眺められる2次元・3次元の地図へ射影する。
この一本の技術の縦糸は、遺伝子発現データ(博士課程)→ 単語(word2vec)→ 人々の意見(ブロードリスニング)と、対象を変えながら20年以上ずっと私の仕事の中心にあり続けています。
私は博士取得後にアカデミアに残らず、ソフトウェアエンジニアになりました。
いわゆる研究者としての道は歩んでいません。
それでも大学院で身につけた「高次元データを地図にする」という発想は、対象を変えて何度も私の仕事の中心に戻ってきました。
一本の線でつながっている
高次元ベクトルの可視化には、対象が何であっても共通する性質があります。
2次元に落とした散布図の縦軸・横軸そのものには意味がありません。
点の位置が表すのは「ベクトル同士の相対的な近さ」だけで、「右上だから良い」といった解釈は誤りです。
これは意見のブロードリスニングでいつも注意することですが、
20年前に遺伝子発現データを球面SOM(自己組織化マップ)に投影していたときも、まったく同じことを言っていました。
似たものが近くに集まる地図を作り、そのクラスタを人間が読む — 技術の対象は分子から言葉へ、言葉から声へと変わっても、やっていることの骨格は変わっていません。
実践の記録
- 2002–2006年(博士課程): 高次元の遺伝子発現データを球面SOM(自己組織化マップ)で低次元に射影して可視化する研究。「ゲノム丸ごと可視化」(4次元グラフによるゲノム可視化)は未踏ユースプロジェクトにもなり、スーパークリエータ認定につながった。関連発表: WSOM2003 / RECOMB2004 / SCI2004 / WSOM2005、および情報処理学会論文誌「数理モデル化と応用」掲載の "Spherical SOM and arrangement of neurons using helix on sphere"(球面上に螺旋でニューロンを配置する手法)
- 2014年: 『word2vecによる自然言語処理』刊行(オライリー・ジャパン)— 単語を高次元ベクトルとして表現し、意味の近さを距離で扱う技術を解説。可視化の対象が「分子」から「言葉」へ移った
- 2024年5月: Talk to the City — 意見テキストを埋め込みベクトルに変換し、UMAP等で2次元に圧縮してクラスタとして可視化するブロードリスニングツール。2024年5月には文化庁が集めたAIと著作権のパブリックコメントを可視化する実験を実施
- 2024年–現在: 広聴AI(kouchou-ai)の開発 — 大量の意見を数千次元のベクトルに変換し、次元圧縮とクラスタリングを経て「意見の地図」として可視化。可視化の対象が「言葉」から「人々の声」へ移り、ブロードリスニングの中核技術になった
つまり、大学院で研究していた高次元ベクトルの可視化という技術が、
20年後にブロードリスニングという全く別の応用領域で、私の仕事の中心に戻ってきたことになります。
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関連 Story: ブロードリスニングの実践 / 知的生産 / Plurality / 人材育成
このページは 2026-07-29 時点の記録です。可視化の対象は今後も広がりうるため、このページには追記されることがあります。